湯野上温泉 民宿いなりや1@部屋
大女将と若旦那の親子の民宿
人となりを語らずにこの旅館は語れない。若旦那がいつも大女将を「おっかぁ、おっかぁ」と呼んでいたので僕も「おっかぁ」と呼ぶことにする。凄く良い呼び方だよね。素朴で暖かくて柔らかい言葉。でも呼び名って身内と外用で使い分けるでしょ。人前では「おふくろ」だったり「ばあさん」だったりありきたりな言葉に置き換えて。でも若旦那は当たり前に普通にお客の前で「おっかぁ」と呼ぶ。勝手な勘違いなのかもしれないが、その飾らない言葉遣い・雰囲気は例えようのない優しさで包まれている。
正直最初は色々な気遣いの声がけを「またまた、ありがちな営業トークだとこと」と冷めた目線で聞いていた。「わざわざ遠くから寒いところに来てくれてありがとう」なんて言われても「ベタだな」くらいにしか取れなくて気恥ずかしかった。
接客という仕事は少しずつ心をすり潰す作業だと思う時がある。だから接客をしながらずっと無垢の心のままでいるというのはある意味不可能なんだろう、と考えていた。でも繰り返し二人の言葉を聞き表情を見てそこに裏表のない心が存在することに気付いた時はちょっとした奇蹟に遭遇したように感じられた
おっかぁも独特な人である、と思う。ちょこんとしてゆるやか。少なくとも埼玉県には同じタイプの人はいない。我々の体内で流れる時間とおっかぁの中で流れる時間は別の種類なんじゃないかと感じる。言葉数は多くないのだが、その言葉の多くはこちらを気遣う種類のもの。好きにならざるを得ない。
部屋まで案内してもらうがおっかぁが先導する形で歩くのでうまく方言を聞き取れず最初は随分戸惑った。「風呂であったまれ」と「いっこいっこ準備するから」というのは聞き取れたが言葉の中身まではわからない。(方言を言葉で表記すると汚らしくなるからしません。が、ですます調ではないのでぶっきら棒な語尾になります)
客室は2階
引き戸の扉だけど外から鍵がかけられる。同泊のおっさんが力の限り閉めてたな。力自慢は別の場所でね
踏み込みがあってそこでスリッパを脱ぐが「スリッパは廊下な」と諭される
スリッパが部屋の前にあるかどうかで風呂やトイレの混み具合が把握できる
6畳一間だけど一人旅はこのサイズがベストじゃなかろうか。とても落ち着く。
おっかぁの「一個一個」というのは「ファンヒーターに灯油を入れて」「浴衣を出して」「お茶を出して」「布団を敷いて」の一連の準備を順番にこれからやりますってことでした。
「とりあえず1番風呂に入ってきな」
手ぬぐいと歯ブラシが入ったビニール袋を渡される
「じゃあお風呂お借りしますね」
鍵についている鈴が良い(大きい)音をだすこと
夜はベルを握りしめるか外さないとね
風呂から上がるとおっかぁが厨房から出てきてお茶の入った魔法瓶を持って部屋まで一緒に来てくれる
急須いらずで楽ちん。夕食までには飲み干した
ちょっと寝ちゃった。初めて泊まる旅館は緊張感がなかなか抜けないんだけどなんと気安いことか
お風呂は朝何時から入れるんですか?「寝て起きたら」
wifiのパスワードわかります?「○○○。漢字やらひらがなやら入れてみな」
アバウト!
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