朝8時から9時まで湯船の清掃時間と説明を受けた
が、大雑把なもので9時を過ぎても掃除札が出ていてチェックアウト時間が迫る
「もう大丈夫?」
「あー、うん、いいよ」
お湯を張り替えたばかりの湯船は濁りも少なく鮮度抜群で、これを味わねば帰れない
窓が開け放たれた浴室は、日の光が直接湯船に降り注ぎ
冷気と光に満たされた浴室は広大な雪原の中に在るような錯覚を覚えた
お湯と冷気の中に心の淀みが解けていく
開放され自由になったとわかる
心の表面の輝きは取り戻せた
建物に囲まれた露天風呂も見上げれば青と白のコントラストが美しい
「ヌルくね~かい?」くわえタバコのおやじが掃除ついでに現れる
「温めの方がよく温まります」
おそらく彼の口から煙草を離すことは生涯できないだろう
ナチュラルすぎてうまく感情が沸かない
外湯は宿題にした
どちらにしても目的の「むじなの湯」は湯温が低すぎて閉鎖中、とのことだった
仕事が終わって陰鬱な時は、また来れば良い
我々が生きている間は、お湯は簡単に変わらないはずだ
スーパー銭湯では体が納得しない時は
受け入れてくれる宿に願いを乞うのだ
浴室で似た物を見た
宿代よりも高価な交通費、宿代よりも高価なお土産、という事実は
誰に一番お金を落とすべきかについて考えると心が痛む
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