天之美禄に初めて行ったのは2012年。もう7年前のこと
鰯のぬか漬け焼がメニューにあることを知って食べたくなった
当時は日本酒にさして興味もないし、まして個人経営のこじんまりとした居酒屋にも行ったことがなかった。まだピュアなベイビーだった(正確には少しずつ嘘をついている)
なので、天之美禄の暖簾をくぐるのは随分緊張した記憶がある。わざわざ最初にチェーン店の居酒屋で少しお酒を飲んでから(美味しくなかった)「さぁ!」と気合を入れて店に向かった。
炭焼き、というメニューなのに炭粉まみれの鶏肉が出てきたチェーン店の居酒屋
目的の鰯のぬか漬け焼を堪能し、碌に知識もないから日本酒もデタラメに頼み、楽しく過ごした。ご主人はとても若く恐らく僕と年齢は変わらない位で、店内は常連がクダを巻くような陰気さもなく居酒屋初心者にも好印象だった。
とmこさんは既にエアブロガーだったので、メニューの写真・料理の写真を撮っている。メニューを見返しながら教科書のように使い、旅行先の旅館に天之美禄で見た日本酒があればそれを注文するようになり、銘柄も徐々に覚えるようになった。日本酒の良さを教えてくれた店だ。
熊谷の陶芸教室に通っていたこともあって、天之美禄にも良く行った(といっても10回だけだけど)。朝4時に起きて沼田で昼まで釣りをして、急いで熊谷に戻って陶芸教室で遊び、夜に天之美禄で呑む生活をしていたのだが、体力が尽きて釣りをやめ陶芸をやめ熊谷に行かなくなり、天之美禄からも足が遠のいてしまった
天之美禄の良くないところもいくつかあった
まず、立地。飲み屋街のチェーン店居酒屋に囲まれるような場所にあったので、天之美禄周囲の環境は良くなかった。僕はお酒は好きだが飲み屋街の雰囲気は嫌いなので、天之美禄に責は一切なくてもなんとなく行きたくない理由にはなった。
ご主人一人で切盛りしているので、人手不足感を感じることもあった。これは、どちらかというと僕らに問題があったのだと思う。下戸のとmこさんと一緒に行くということは、一人は食事をするということだ。天之美禄の料理は酒の肴として完成されているので、食事として捉えるとボリュームは少ない。なので色々と頼んでしまうと厨房がバタバタしてしまう。もしかして、僕らはあまり良くない客というかターゲットゾーンでは無いのではないか?と思うことはあった。
そして最大の理由のはやはり、煙草。日本酒がメインの居酒屋だから?年齢層が高めだから?煙草を吸う人は必ずいて、最初は店の魅力が勝っていたからできるだけタバコのことを考えないようにしていたが、うまい日本酒と肴には煙草の臭いが邪魔過ぎて、かえって他の店より煙草の臭いが気になってしまい「天之美禄に行きたいな→う~ん煙草がなぁ…」という自問自答を繰り返し、結論として「煙害は嫌だからまた今度」という答えが出る日が続いた。
結局2012年に10回、2015年に1回、2017年に1回行っただけだ。ただ、驚くべきことに2015年も2017年も数年空けて行ったのに、きちんと覚えていてくれたのだ。あえて名付けるなら、エア常連である。店にとってはお金を落とさない常連など存在しないのであるが、心苦しいながら常連面をさせてもらっている。
文章ばかりだとみんな読んでくれないだろうから、とmこお気に入りの「明太子とチーズの厚焼き玉子」を過去画像で嫌という程見せてやろう
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行かない理由は数あれど、決してお店が嫌いなわけではなく、むしろ大好きなのでツイッターでいつもメニューを眺めながら過ごしていた。行ってもいないのにお店のことは結構知ってるストーカーが誕生した
4月に移転の情報を知る。行く行く詐欺をしているうちに新しいお店に移転かぁ随分人気店になってるんだろうなぁ、と勝手に感慨深い。新しい店舗も気になるけど、懐かしかったあの空間で最後に呑んでみたいなと思った。思ったが、仕事が忙しく機会のないまま旧店舗は店を閉じてしまった。
そして、新店舗は完全禁煙という情報を見て「あぁもう完璧じゃねーか。行くしかねーじゃねーか」とワクワクして開店を待ちわびたが、仕事で上手くいかない案件を抱えてしまい、何をしても楽しくない心境で過ごすことになったので、GWも行かないままずるずると過ごした。
5月に入りGWも終わり、仕事上の懸案事項もなんとか目処が付きそうな水曜日、やっと天之美禄に行ける日がやってきた。4月中旬から、ずっと悶々として生活していたので天之美禄に行く夢を数回見るほどこの日を待っていた
当日の昼、とmこに昼飯を作る。僕が夜のツマミに作った残り物を綺麗に並べただけだが好評だった
胡瓜・春菊・ザワークラウト・トマトのオーブン焼き・タンドリーチキン・鶏もも肉の塩焼き・アトランティックサーモンの漬焼き
僕は最近なんちゃって一日一食生活をしているので、卵スープと少量の鶏胸肉に留める
17時半開店なので、17時半に店に着く様に出かける
新天之美禄は、大きな通りに面していて風通りが良い。飲み屋街からも離れていて雑多な雰囲気もなく良い場所だ
この場所はティアラ21やニットーモールの駐車場が近いので利便性も良くなった
店構えは高級感がある。予備知識がなければ入りにくいかもしれない
でも、扉越しにお店を覗けるので人を拒む雰囲気はない
暖簾をくぐってドアを開けようとするが、開かない。パッと見は引き戸に見えるデザインだが、普通のドアだった。
ご主人と目が合うと、きちんと僕らを(あっ、久しぶりに来たって)認識してくれている。それは一番嬉しいもてなしだ。
正面に8席・左右に3席ずつの合計14席。カウンターのみ
中央に厨房がある。ライブキッチン
カウンターだけのお店って初めて。コミュ障なのでカウンター席は今まで避けてきたから、カウンター席だけのお店も当然避けてきた。
でも天之美禄がカウンター席のみになったからといって「行きづらいお店になった」とは思わなかった。それはご主人の人柄をすでに知っていて、我々の邪魔をするような人ではないと知っていたから。むしろ、料理がどのように出来上がっていくのか目の前で見ることができる事を楽しみにしていた。
カウンターのみになって、動線が良くなった。旧店舗ではお酒の注文回数を増やしたくなくて必ず一合で頼んでいたが、グラス(半合)の注文が気軽にできるようになったのは嬉しい。バイトじゃなくて店員さんらしきお兄ちゃんもいたし
メニューは更新頻度が高いので、twitterで確認するよろし日本酒以外はビール・梅酒・ゆず酒か
焼き鳥・鶏のから揚げのような安直メニューは無い
今日の炭水化物はサバキムチ丼だけだった。おにぎりやお茶漬けもなくなった。酒と肴で舌を喜ばせてからの、腹を満たす為に別店で締めラーメンとかの流れになるのかな。僕は締めなんちゃらをやったことがないので分からないのだけど
食事メインのとmこさんはこのお店は卒業かな?豆腐サラダがなくなったのもちと痛い
特化するというのはそういうことなのだろう。メニューはご主人のこだわり帳のようなものだ
初めて行った時のまだ尖りきっていないメニュー
まだ焼き鳥盛り合わせがある。尖っていないというのは面白くない半面、使い勝手が良いということでもある。どうするのかは店主の考えが全てだ。自分の店なら自分の好き勝手にやりたいだろ?僕は尊重するよ
(おにぎりも美味しかったけどな。炭水化物に日本酒も合うでよ)
じゃあ、2019年の移転後のnew天之美禄を始めましょう
日本酒のお店であろうと、最初はビールから始める。僕はそういうちょっと失礼な人
一口目はアルコール度数10%以下が体に良いような気がするから。最初から日本酒を煽るとぶっ倒れそうだしね
「うすはり」のグラス
恐ろしく軽い。自宅用に買った事があるが少し気を抜くだけでパキパキと割れていった。最後のひとつは割れないように食器棚の奥に仕舞いこんだが、それはもう存在していないのと一緒。酔っぱらいが使うグラスにうすはりを選ぶなんて、もう立派な高級店だ(これ間違ってるかも。グラスで頼むのは今回初だから昔からうすはりを使ってたのかもしれない)
とmこはウーロン茶
以前はポンジュースが定番アイテムだった
お通しは、はまぐり。席に着いてから火が入れられる
しょっぱくて旨い。このしょっぱさが胃を動かし食欲を出させる
新玉ねぎとトマトのみぞれ酢
如何にも体に良い
刺し身の盛り合わせを頼む
一人分のカツオを藁でファイヤーしている。味のためでも有るが良い演出だ
「金曜の忙しい時はなかなか出来ないんですけどね」とのことであった
にんにくを2切れ薄くスライスし、山葵をする。注文を受けるたびに一人分ずつ同じ作業を繰り返す
丁寧で手を抜かない調理を「魅せる」には、この新天之美禄はうってつけ。とmこさんは調理を見るのが楽しすぎて、食事に集中できないそうである
カツオの強さに負けない藁の自己主張が凄い。鼻に藁を突っ込まれたような気がした
藁にはヤニは含まれないので燻製感は出ないのだけど、カラッとした焦げ感が鼻でも美味しい
しょっこはカンパチの子供。子供の味でさっぱり
生しらす
だぢゅー 花泉酒造 福島県南会津郡南会津町
日本酒の頼み方?順番?ルール?気にしなくて良いじゃん
「だぢゅー」という名前が面白かったからという理由だけで頼んだよ
この福島の方言は群馬弁に直すと「べえ」ってところか
「うんめぇだぢゅー」=「うめべ(ぇ)」
わからん人にはナンノコッチャだね
天之美禄の良いところは、日本酒に拘りを持ちつつも押し付けが一切ないところだと思う。日本酒は間口が狭いというかハードルが高いというか、スノッブで面倒くさい面がある。でも、天之美禄では一口づつしかめっ面をしながらテイスティングして分かったような顔をしなくて良い。「あぁ美味しい」と感じながら素直に美味しく飲める場所である。飲んだ直後に感想を求められたり薀蓄を聞かされるようなことは無い
澤の花 何県だのの説明はもういいべ
注文した日本酒の一升瓶を必ず置いていってくれるんだよ。素晴らしいでしょ。お酒の情報を読んだりラベルを眺めることができるし、我々のように写真を記録に残すのにも重宝する。空瓶ではないから重くて相当面倒くさいだろうと思うが、そういう演出はやはり有るのと無いのとでは楽しさも全然違う
山うどの天ぷら
穂先部分の天ぷら。香りと苦味が良い
アスパラの天ぷら
穂先は味が濃く、根本はとろけるように柔らかい。会津産
アスパラは山菜でもないのに山うどよりも濃厚で、そして甘い
御慶事
ウーロン茶おかわり。下戸であろうと一席占拠しているから飲み物を沢山頼め!飲め!!
僕が奪って飲み干しちゃうんだけどね
焼きたけのこ
そろそろ終わりだね
とmこ「どこまで食べれば良いんだろう」
とむこ「噛み切れなくなるまで」
明太子とチーズの厚焼き玉子。とm子はこれを食べるために来ている
今回、料理過程をばっちり観察させて頂いた。僕らの他にも注文している人がいたから2回勉強できた。自宅で挑戦してみよう
昔からずっと旨い
天之美禄では貴重な濃い料理でもある
永寶屋
灘の生一本 10年熟成山廃仕込
これはちょっと特殊な酒だった。お代わりすればよかったな
ウーロン茶
個性の強い灘の生一本からの次が見つからなくて、純米大吟醸に戻る。グダグダだ
いぶし和牛
カツオの藁焼きがとても美味しかったので、和牛もファイヤーしてもらう
良い肉良い匂い
美味しいだけでなく美味しくて楽しい店になった
煙害の心配はなくなったから昔のようにちょこちょこ顔を出せたらな、と思う。今後はもっと人気のお店になるだろうから満席の心配をしなくちゃだね
次は仕事終わりに、電車で一人で来てみよう
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