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鹿教湯温泉 三水館13@全部(写真なし)

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2021年1月宿泊 13回目



旅行に行くたび(とmこさんが)写真をたくさん撮る。合計何万枚あるだろうか?もちろんその殆どは見返すまで「こんな写真撮ったんだ」状態で、中には一度しか目を通さない写真も多い。

 
でもそれだけ写真を撮っても「これが1番だよな」と自信を持って言える一枚がある。食事処で佇むにゃん蔵を写したものだ。もちろん全ての旅館の中で1番、という意味である。温泉旅館に泊まり続けて来て色んな客室・色んな湯船・色んな食事に出会ってきたが、この写真を超えることは多分無いだろう

 
鹿教湯温泉の外れ、食事処からは寂しい光景しか見えない。まばらな建物と雪がうっすらと乗った地面、小さい里山。にゃん蔵はその光景をじっと眺めている。彼は室内飼いではないから外をよく知っている。だからわざわざ食事処から外を眺める必要はない。当時は三水館の周りに数匹の野良猫がいて縄張り争いも彼の日課であった。だから屋内にいても外を監視する必要があったのだろう

 
でもこれは僕が得た情報を勝手に組み立てたものでにゃん蔵は我々がするようにただぼんやりと外を眺めていただけかもしれない。何をして過ごそうかとか今日の客は煩いなとか考え事をしていたのかもしれない。そういう空想をしながら写真を眺めていると時間はどんどん過ぎていく。見飽きることがない

 
以前、いがらしみきお氏が何かの対談で「飯島愛が亡くなっている部屋の絵を描きたい」と言っていたのをにゃん蔵の写真を見ながら思い出す。孤独死した人の絵を描くなんて不謹慎だ、と多くの人は思うのだろうけど僕はその絵を心から見てみたいと思った。美しい光景ではない。でも、その絵には空想するしか無いストーリーがいくつもあるはずで、にゃん蔵が何を考えていたのか想像するのと同じような魅力に溢れているような気がする

 
本筋から大分離れてしまった

 
1月に連泊できる日程を組んでいたが、我が家の猫問題が解決しないため2日は家を空けられない。とむこ一人旅なら3泊の日程も組めるが、一人旅はとmこさんが出産してからウンザリするほど行けるだろうと今は二人旅を選ぶ。いくつかの候補を眺め、三水館の空室が多かったので予約を入れた。密を避けるには混んでいないほうが良い。備考欄に「宿泊地域の制限等はありますか?」と記入しておいたが、特にそういう事はしてないとの返事が来た

 
10回以上同じ宿に宿泊すると旅館に対して一切の期待をしなくなる。表現として穏当ではないかもしれないが、ワクワクしないで予約することが定宿への入り口なんだと思う。僕らは旅館を選んで予約するとき「この旅館でどんな体験が出来るだろう?」という期待に胸を膨らませる。美味しい食事だったり気持ち良い風呂だったり。宿泊した旅館がとても良かったら数回通うが、そこにはやはり期待が存在する。前回と同じくらい楽しいだろうか?とかもっと美味しい食事が出てくるだろうか?とか。大抵は2~3回通うと新鮮味が無くなり期待したほど興奮もせず新しい刺激を求めて通うのをやめる。

期待の反対語は失望。勝手に期待して勝手に失望する

でもそうやって期待と失望を繰り返しているうちに何となく通ってしまう旅館が出てくる。4回目と7回目の記憶が混同してしまう位似通った内容なのに8回・9回と泊まってしまう。旅館選びで行きたい旅館が見つからなかった時や旅館選びが面倒な時、ふと「空いてればあそこで良いか?」という旅館が自分の中でできる。

 
それは良いことのような気もするし悪いことのような気もする。見たことのある映画を意味もなく眺めるような時間の浪費に近い

 
でも期待せずに泊まるマンネリ旅館ほど居心地が良い場所はない。気分が高揚しなければそれだけ心も緊張しない。自宅で寛ぐような気安さで滞在することができる。旅館の感想で「おばあちゃんの家にいるみたい」的な表現で寛ぎをアピールする人がいるが、彼らの感じる寛ぎとマンネリ宿の寛ぎは根本的に異なる。本当の寛ぎとは行っても行かなくても良い場所に行っても行かなくても変わらない心の状態で過ごすことなのだと思う。その境地に達するにはやはり飽きるほど宿泊するしかない

 
 
3連休、というか年末から日本海側はずっと雪が振っていた。いつもは雪見風呂を楽しみにしている僕でさえドン引きして新潟・長野北信には足を踏み入れたくなかった。上田市でも雪予報だったが雪深い地域ではないから大丈夫だろう

高速に乗る前にドトールに寄った。アメックスの30%キャッシュバックキャンペーンが目当てだったがその店はキャンペーンをやってない上に注文前にクレジットカードを預かるとか言うので現金払いで最小限の注文に留めた。クレジットカードを自分で機械に通すのが普通になりつつあるのにカードを最初に預けるなんて怖くて出来ない。おかげでミラノサンド2つの予定がジャーマンドッグ1つに変わり、とむこは昼抜きでコーヒーだけすする羽目になった。キャッシュバックが使えなくても普通に買えば良いのだが、キャッシュバック前提で店に来ているので出来かねる。ケチとか貧乏とかは関係ない。主義の問題だ

とmこ「(こんなしょぼい内容なのに)ケチャップが要るか聞かれたの?」

とむこ「ん~渡したく無さそうな言い方だったよ。経費削減かね」

 
連休最終日だったので高速道路はかなり空いていた。緊急事態宣言の影響もあるのだろうし、Gotoキャンペーンが使えなくて旅行のキャンセルも影響しているはず。賛否あるGotoキャンペーン、副作用も大きいかもしれないな

藤岡ジャンクション手前でシルバーのWRXの覆面がパトランプを出して路肩に停まっていた。青のWRXの覆面は有名だが、現在青・シルバー・黒の3種類のWRXの覆面が存在するようだ。埼玉県内の関越はまったり走る場所になってしまったな

数ヶ月前からとmこさんを後ろの座席に座らせるようにしている。交通事故が起きた時、助手席よりも運転席の後ろのほうが生存率が高いので、念の為。周りから見ると変な光景かもしれないが、会話も問題なくできるしお互い隣のシートを物置として使えるので便利でもある。駐車場に止める時助手席側を大きく空ける必要もない

 
 
三水館にチェックインする前に大塩温泉共同浴場に寄った。14時から利用でき、15時まで加温されない。冬に源泉温度36℃は冷たいかもしれないが、人に会わなくて良いだろうという目論見があった。

 
国道254を左折して大塩温泉に向かう細い道に入ると道路は氷に覆われていた。大きな道は交通量が多いから乾燥しているが、脇道に入ると溶けなかった雪が氷に変わり道にへばりついている。スタッドレスタイヤを履いていてもやはり緊張してゆっくりと進む。共同浴場の裏に車を停めると僕ら以外の車はなかった。予想通り、とニヤける。無人受付で200円払い来館カードに名前と電話番号を記入した。感染者が出たときの連絡用とのことだ

 
館内は寒い。一切の暖房設備がないので脱衣所で急いで服を脱ぐ。秒単位で体がどんどん冷える。

浴室は2つの浴槽が有りまずは大きな浴槽に浸かった。温度は34℃、冷たい。すぐに小さい湯船に移動する。こちらはなんとか36℃弱でとてもぬるい。大きな声で「ぬっるーい!!」と叫びたくなる。泡付きも良いし寒くないしとても良いのだが二人で入るには小さすぎる浴槽なので誰か来やしないかヤキモキしながら過ごす。全然落ち着かなかった。それでも40分お湯と戯れて上がるが、体は全くポカポカせず外気温と変わらない脱衣所で急いで服を着る。バスタオルを持ち込んでいなかったら体に付いた水滴が凍ってしまっていただろう

三水館へ

旅館で良くある体温チェックは三水館にはない。額で測る体温計は大抵出鱈目で僕の平熱は36.4℃なのに35.8℃とか36.1℃とか旅館で言われるとなんだかなぁという気分になる。本当にチェックしたいなら脇で測る体温計使えばよいのにといつも思うが、何故あれがスタンダードになってしまったのだろう?芸能人がするマウスシールド同様無意味な行動を僕らはしているような気がする。

部屋に案内されて、タルトをパクっと口に入れてから(ドトールで僕の昼食を諦めたからその代わりだ)急いで風呂に向かった。とにかく40℃以上のお湯に浸かりたい。源泉かけ流しも循環も加温もどうでも良い。体を温めたかった

 
脱衣場にアルコールスプレーが置かれていた。脱衣籠用。僕は旅館で宿泊者と共有せざる得ない脱衣籠が1番の不安要素だったけど、こうしてアルコール消毒できるようになっているととても安心できた。遠慮なくブシュブシュと籠にスプレーをして服を放り込んだ

 
浴室に足を踏み入れると、先にチェックインしていた夫婦が内湯で浴室越しに会話をしていた。僕よりも年上だがとても仲良さそうな口調が夫婦仲の良さを感じさせる。あーよい夫婦ですね僕らも負けませんよ、でも邪魔をしないように露天風呂へ入る

41℃の露天風呂は0℃付近の外気にはとても熱く感じた。でも湯船でじっとして体がお湯に馴染むととたんに心地よくなる。足先・指先の血管が広がり全身が温まるのを感じつつ一息つく

 
三水館の露天風呂は周りが壁なので必然的に空を見上げて湯船に浸かる。壁を見つめても一つも面白くない。快晴の空は田舎特有の透明度で、美しいような寂しいような気持ちになる。空には一匹のトンビ、羽ばたかず同じ形で円を書くように飛んでいる。野生のトンビがああやって大人になるのはどのくらいの確率だろうか?

以前、熱心な野鳥の保護活動を行っている人にトンビを連れて行ったら「なんだよトンビなんか持ってくるなよ」と言われた記憶が急に再生された。希少な鷹を保護すると目をキラキラさせてこの鷹が如何に珍しいかいくらでも語るような人がゴミを見るような顔でトンビを見たのは忘れられない。鷹と梟には惜しみなくの愛情を注ぐが興味のない鳩やアヒルは「ほっときゃ鷹の餌になったのに」と関わろうとしない。でも彼はその地域で第一人者として神様のように扱われていた。トンビも鷹も同じ猛禽類だが、数の少ないものしか愛せないのだろう

 
 
十分に体が温まり、風呂から上がってロビーで寛ぐ。冷水を飲み干し新聞を眺める。長野県のコロナウイルス発生状況を確認して「おっ、東信結構ホットじゃん」と思ったりする。でも埼玉よりは格段に少ない。埼玉は市中感染というより病院・老人ホームでクラスターが発生していた。当時僕の住んでいる地域では毎日3~4人の感染者が報告されていたが殆ど入院中の高齢者または医療従事者だったので神経質にならずに生活していた

みーちゃんはロビーの定位置から基本的に動かなかった。床暖房が暖かいお気に入りの場所が決まっているようだ。構って欲しいときににゃーにゃー言いながらそばに来て触るよう命令したり、人の水を奪っていったりする。

 
とmこさんが風呂から出てきて合流する。

今回、とmこさんは女性客を嫌っていて風呂に誰かいると入るのを止めていた。挨拶ガン無視の人と脱衣所で荷物散らかし放題の人がいたそうである。そして、挨拶ガン無視の人と荷物散らかしの人は露天風呂を占拠して全然動かなかったり、お互い譲らずバチバチして露天風呂に入っていたりしていたらしい(因みに男湯では内湯なり露天なりに人がいるとその湯船を避けたり湯船を移動してローテーションしたり何となく譲り合う雰囲気がある。そういう何となくはコロナ禍以前から形成されていた)。そんな退かし合いの文化が花咲く浴室には近づきたくないようであった。荷物散らかしの人はロビーでも風呂セットを自分から遠い椅子に置いて過ごすような人だったのでとmこさんからそういう話を聞かされる前からとむこも「無遠慮な人がいるな」と思っていたのだった

 
 
今回三水館に来た目的の一つ「陶器を買う」。前回買った器が三水館ごっこで捗り、宿泊毎に少しずつ買い足していったら楽しいのではないか?しかしながら「金属作家 杉島大樹」氏の個展中で陶器はいつもの5分の1程度しか無く、金属の器は僕の心をコツンとも打たなかったので今回は何も買わなかった。三水館のご主人は杉島氏の作品にぞっこんなようだが、僕には南米で作られたスティールドラムとの区別がつかない程度の感受性しか無く(いや、スティールドラムも凄いのだが)美術の目は年を取れば勝手に身につく訳ではない事を知る。角皿に似た金属の板は半解凍の刺身を乗せておくと丁度よいかもと思ったが、値段が税抜で5,100円だったので止めた

 
鹿教湯温泉では夜に「氷灯籠」というイベントが行われていてブログ的に良かろうと思っていたのだが、チェックインして風呂に入ってしまうと徐々にどうでも良くなる。暗くなるのを待つ内に「行かなくてもよいか?」という結論になりそのまま部屋で過ごした。それよりも部屋の炬燵で温まりながら苦い液体を体に流し込むほうが魅力的だった。三水館の庭に生える電球を部屋から眺め氷灯籠を見た事にする。

 
冬はネギ鍋と決まっているので夕食は大体想像がつく。だが出てくる料理の順番が大きく変わっていて、それはとても良い変化だった

以前は

前菜→ネギ鍋→刺身→煮物→豆腐→サラダ→焼物→酢の物→ご飯→デザート

だったのだが

前菜→刺身→サラダ→ネギ鍋→豆腐→焼物→揚物→酢の物→ご飯→デザート

に変わっていた

 
最初にネギ鍋を食べると直ぐにお腹が満たされてしまい、残りの料理を楽しむ余地が減っていたのだが、刺身とサラダが先に出て来ることで胃が活発になる準備運動のような時間が出来て胃が苦しくならなかった。

 
ここ数年、刺身は信州サーモンばかりだった。とは言え、年に1・2回しか泊まらないのでタイミングが悪かっただけだと思うが今回久しぶりにシナノユキマスの刺身が出てきた。長野県の旅館に泊まるたび信州サーモンが出てきて辟易していたのでとても嬉しい。シナノユキマスという名前も良い。ポーランド原産のサケ科コレゴヌス属「コレゴヌス・マレーナ」をシナノユキマスと呼んでるだけだが、まぁそれは置いといてシナノユキマスは旨い。

 
柚子胡麻豆腐は柚子の風味が鮮烈でとても気に入った。

 
じゃがいも饅頭を揚げたものは口に入れた瞬間「ファストフードの味がする!」と爆笑した。マッシュポテトのフライドポテトしか映像が浮かばない。和食だろうと洋食だろうと工程が一緒なら同じ味になるのは頭で理解できていても、三水館の料理を食べた時によりによってファストフードが頭に浮かぶとは思わなかった。すごく良かった

全然期待せずに泊まる、なんて書いているが定番の料理は変わらないものの何かしら1つ2つは勉強になり三水館の料理は面白い。

 
朝は雪が舞っていた。目を凝らさないと分からない程度のささやかな雪が舞う。昨日露天風呂から見えたトンビだろうか?何処かから「ピーヒョロロロロ」という鳴き声が聞こえる。寒い雪の中、ちゃんと餌にありつけただろうか?

朝食のご飯がぶつき米に変わっていた。特に説明もない。チェックアウト時に聞いたら8分つきということだった。玄米を出すのはまだ勇気がないそうである。事前説明無しで分つき米を出すのも相当勇気のいる行動だと思うが、三水館の宿泊者は分つき米を知っていて当たり前のように受け入れるのだろう

朝食の終わり頃、雪が強くなる。細かくて小さい雪が小雨のように振っている。にゃん蔵が覗いていた窓から見える雪はこうじゃないと駄目だよな、と思う。大きくて重い雪がフラフラと落ちる光景よりも雨のように降り注ぐ雪の方が何倍も美しく悲しい。

 
帰りはいつものように農作物を買って帰る。三水館で食べたあれこれを実験する材料を現地で揃える必要がある。そういえば滞在中に三水館で使用している食材が三和土に並んでいれば他所で買い物して帰らずに済むのになと思ったりしたが、需要はないだろうか?

定番のあさつきに寄ると駐車場に車は5台しか止まってなかった。異様に空いていて営業しているのか不安になったが開いていた。干柿・刺身蒟蒻等々を買う。ヘルシーテラス佐久南に行く途中、ツルヤ立科店に寄ったら激混みだった。明日定休日なのでまとめ買いをしてる人が多いみたい。三水館に置いてあった「やさしい紅茶」をとmこさんが見つけ購入。とむこは「鉱泉せんべい」がよく分からなくて買ってみた(磯部鉱泉のPB商品だった)

ヘルシーテラス佐久南は相変わらず野菜天国。下仁田ネギで作るネギ鍋は三水館のネギ鍋に近い雰囲気でした。

おしまい

コメント

  1. ジャン より:
    その境地に達しております。

    >期待せずに泊まるマンネリ旅館ほど居心地が良い・・・
    >自宅で寛ぐような気安さで・・・
    >本当の寛ぎとは行っても行かなくて変わらない心の状態で過ごすこと・・・
    >その境地に達するにはやはり飽きるほど宿泊するしかない・・・

    ありがとうございます。

    金の使い方を間違えたかなと思う時もありますが。(笑)
    • とむこ より:
      ジャンさんは定宿があるから僕の感じたアレコレの先にいるのでしょう。とむこはまだ定宿が決まっていなくて境地に達する途上ですがいつか定宿が見つかると良いなと思っています。
      定宿といえど波はありますよね。それも含めて定期的にお金を落としてこそ常連面ができるのではないかと…いやでも言いたいことはとても良くわかります
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