空気感を表現しようと頑張ったが、難しい。
敷地内は「昭和」のまま時間が止まってる。ありきたりな表現だが、建物だけじゃなく、中を漂う空気すら昭和のままなのではないかという錯覚を覚えた。昭和時代の小野川保養センターを大きなジッパー袋で密封してしまい、今さっき開封したような変なフレッシュさを感じる。ここよりも古い旅館に泊まったことはある。でも、他の旅館では昔の名残を感じる事はあっても「昭和の中に身を置いている」という錯覚のような実感を得ることはなかった。リフォームだったりLED電球だったり、細かいこともあるのだろう。
館内に佇むと、忘れてしまっていた昭和時代の事を思い出す。例えば夜の娯楽はテレビ位しかなくて見たくもない野球中継を居間で親と一緒に見ていたことや、マクドナルドが珍しくて人に自慢できるようなご馳走だったこと。旅館と全然関係ないことだ。頭が混乱していた。
館内の臭いも関係している。硫黄泉の少し焦げたような臭いとタバコの臭いが混ざりあって淀んだように停滞している。そういう綺麗じゃない空気というのは最近では珍しい。思い返せば、昔はどこでも煙草を吸えたしみんな吸っていたし、車は黒煙を撒き散らしていた。昭和って汚かったんだ、というのをふと思い出したりした。
閉め切られているが、かつては帳場だったであろう場所。
磨りガラス。そう、ガラスの模様も時代を色濃く反映している。木のサッシに磨りガラス、展示物の奥の障子。完璧に渋い
向かいはロビー。当然喫煙可。閉鎖された空間で受動喫煙したのは2年ぶり。気道が痙攣し気持ち悪くなる
ここで大婆ちゃんは〇〇さんに「じゃあ、〇〇さんお願いね」とバトンタッチ。襖の奥へ消えていく。
予想の数倍大きな建物だった。池に囲まれたこの字型の建物で構成されている
ロビーから続く「本館」(と勝手に名前をつける)
この真っ直ぐな通路沿いの左右に部屋が並んでいて食事付きの人はここの部屋が割り当てられるようだ。
素泊まりは突き当りを右に曲がり、更に渡り廊下へ
館内は大体この暗さを保っている。最初の廊下の画像はカメラが勝手に調節しているので雰囲気は上の画像が正しい。灯りが付いている時間は短く、緑色した避難看板の照明がメインだった。僕は照明がついていない(自然光だけの)暗い廊下が大好物なのでいつも見惚れていた。
渡り廊下の先が別棟の「自炊棟」(とこれも勝手に名付ける)
ここの廊下は常に3分前まで誰かが喫煙していたような濃い趣きが立ち込める
ここではいつも吐き気を我慢した。自炊棟に泊まったのは我々だけだったので誰かが喫煙してるでもなく、相当染み込んでいるのだろう。
今回泊まる「月」がこの廊下にある
その奥に自炊場
現役のようだが、衛生面はややワイルド
自炊場の奥にも廊下は続き、犬の鳴き声が聞こえたり?カオス
自炊場の調理道具は揃っているけど、趣きがありすぎて触らずにおく
流しを歯磨きで使ったけど、ほとんど排水されずに溜まっていく。料理してたら溢れるんじゃなかろうか?
「冷蔵庫を使ってください」
素泊まりは我々だけだが、誰のか・いつのかわからない食べ物が入っている
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これも趣きが強めなので遠慮させてもらった
では、部屋へ
踏込。食器棚はあるけど、食器は入っていない
8畳間
あまり使われていない建物なのだろうか?すべての物が冷えている。室内4℃
敷ふとんだけ、既に出ている。
フチのある天板、懐かしい
貸し手ぬぐい
茶器類
お菓子があるとは意外だ
販売のアピールも兼ねているのでしょう
テレビは電源ケーブルもアンテナケーブルも抜かれている
念の為、灯油の残量を確認すると半分ほどしか入っていないので足してもらおうとすると「十分入っている。無くなったら言ってください」とのこと。夜中に灯油がなくなったら凍死しそうなので寝るまで節約+エアコン強制始動で凌ぐことにする。暖房費500円。
窓からの眺め
県道が目の前だけど、交通量は少なく、ほぼ無音。
丸いドアノブの真ん中の突起を押してからドアを閉めると勝手に鍵がかかる。
「予備の鍵が無いので失くしたら大変なことになる」とはっきり宣言される。いや、500円位だから作ろうよ…万が一紛失や鍵閉じ込めが起きたら面倒なので、窓の鍵を開け、貴重品を肌身離さず持ち歩き、鍵を使用しないで過ごした。なんでこんな時に財布にお金がいっぱい入っているのだ。コンビニATMまでは6km
予想外なことに、全てのトイレがリフォーム済み。趣きのない空間が今宵は嬉しい
自炊棟トイレ
本館のトイレは更に綺麗
お風呂の側にも綺麗なトイレがありました。
「古い建物でも水回りだけはリフォーム」これの有る無しで、快適度は全く違う。
やや難解な文章
湯治宿なのに「入浴だけを望まれる方」はダメらしい。
一人旅も軽く煽っている。一人旅は小学生以下の子供と同列扱い
気後れするかもしれないが、堅苦しくはない。ほっかむりの大婆ちゃんとそのサポートのオバサン2名でやりくりしているようだ。スノボ客や賑やかな婆さん集団も居たりで湯治客ばかり、という訳でもない。
個人的には、時折メディアで話題に上る那須の雲海閣よりも小野川保養センターの方が衝撃が大きかった。ここに泊まることで旅行者としての厚みがレベルアップしたような気がした。受け取り方のよってはディスっているように取れるけど、決してそうではないんだよ。スタンド・バイ・ミーで死体を見つけた少年たちが成長して…う~ん、やめとこ
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