とむこの悪口帳

駒の湯温泉 駒の湯山荘5-1@チェックインから夕食まで

 
六日町から駒の湯へは下道を使い田舎道を走る。窓を全開にして駒の湯へ向かう。快晴で27℃。窓から入る風は心地よいが、できれば熱くて皮膚が汗ばむ位のジリジリした日であってほしかった。

色んな旅館に泊まってきたが、僕らにとって駒の湯山荘は特別な場所だ。旅館に行く、という気負いが全く無い。まるで友達に会いに行くような気分で車を走らせている。それはご主人と同い年であることとと毎夜3時間話す事で変な絆のようなものができてしまったからだろう

僕には友達と呼べるような人が一人も居ない。若い頃から一貫して人に好かれなかった。それは自分が悪いので仕方ない事なのだが、大人になってから「この人と友達になりたいな」と思う人が増えた。みうら海王のゴトー店長や駒の湯山荘のご主人、楽しそうに生きている人に憧れてしまう。とは言えお金を介する間柄で友情は成立するのかグダグダ悩む

大湯温泉待合所に佇むご主人を見つけ車を寄せる。作務衣と高身長と坊主頭ですぐにその人と分かる。バスの宿泊客の送迎待ちをしていた。奥さん曰く「〇〇坊主だから遠くからでも分かるでしょ」

12時50分に着いた。10分のフライングは許してもらおう
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女将さんが居てチェックイン手続き。女将さんは一見不思議ちゃん系の自由人なのかな?と思うときもあったが、親しくなるととてもキュートで面白い人なんだなと印象が変わる。意外と人見知りなのだろうか?

今回は、街なかでお客に会ったときにどうするか問題について話す。旅館業では旅館外でお客さんに会う機会は少ないが、同じ接客業としてあ~だこ~だと盛り上がる。ちなみにご主人は常に考え事をしているので街なかで奥さんを認識できないそうである。とむこはお客と目が合いたくないので誰も見ないからとmこさんとすれ違っても気付かなかったりする

館内はDIYのリフォームが進行中


床板は新品になりニスで輝いている


食堂の雰囲気も随分違う。床一面が輝いていて爽やかな空間になった


仕切りはコロナ対策とのことだが、パーテーションとしても機能している

本館の2階、客室のある廊下の突き当り


ご主人が漆喰で越後駒ヶ岳と鷹を描いた。さらっと「残った漆喰で描いたんですよ」なんて言っていたが、多彩な人である(帳場横の壁紙も剥がれてきているので後日漆喰絵を描く予定とのこと。これから宿泊する人はお楽しみに)

部屋は新館。駒の湯ではほぼ部屋には居ないので本館でも良かったが、このご時世少しでも宿にお金を落としたい。ということで新館にした。


リピーターにはリピーター葉書が届くので通常料金よりも安くなるが、これも今年に限ってはやめちゃえば良いのになと思って声を掛けたのだが今年もやるそうである。


「リピーター葉書ってあるじゃないですか?」
「まだ郵送してないですが今回の宿泊料金も適用させていただきます」
何気なくしていた会話だったが、ご主人に一瞬の緊張が走るのが伝わった。僕は高くしてくれって言いたかったんだけど「リピーター葉書はどうなんっとんじゃ?」的な質問に聞こえたらしい


新館からの眺めは綺麗なのだけど、僕らにとってこの部屋は荷物置き場なのさ


次回は探検も兼ねて本館に泊まってみたいと思っている




部屋に荷物を置いたら一目散へ温泉へ。河原露天の入り口にスリッパがないことを確認して喜び勇んで階段を降りる。


今年は蛇を殆ど見なかった

去年の鉄砲水で今までの湯口は壊れた。くねくね動く青いホースから源泉が供給されている


以前の湯口とは雰囲気がかなり異なる

脇から出るシャワーが無くなってしまったのは寂しいが、一箇所から大量に投入された源泉は大量の泡を含み、まるで炭酸泉の様に体中を泡で包む
どうだい?泡に包まれたくなるだろう?「今のままが良い」「前に戻せ」と客によって意見は様々だそうである。僕は脇から出ていたシャワー的なものが好きだったのだが、今回のように投入口が下にあって湯面が静かなのも乙であった。でもやっぱり河原露天は小さなプール的な要素も有るので難しいところである。ご主人によれば両者の意見を取って脇の湯口にバルブを付けて客が調節できるような計画をしているようである

ほぼ雲のない快晴の空。太陽の光は一切減衰せず湯船に差し込む。



写真では雲が写っているが、気流が速く雲は流されていく

気温はそんなに高くないが直射日光が降り注いでいる駒の湯のぬるゆはまるで加温しているかのように温かい。晴れている日の露天風呂は好きではないが、ぬる湯には快晴が最も似合う。源泉のぬるさに太陽の熱が加わりなんとも言えない心地よさになる。至高だ

対岸の緑は去年よりも濃くなった


自然に囲まれた風呂、というのはその雄大な眺めが素晴らしいのではなく木々が織りなす複雑な形・複雑な色に圧倒されてしまうのが良いのだ。色んな葉・色んな緑に囲まれて仔細に眺めていると時間がいくらあっても足りない。


1時間半で、一度上がる

貸切風呂へ移動

ここの床もピカピカになった



貸切風呂から眺める緑も美しい


日を浴びた緑が反射して建物内には緑色の光が届く


蒸せるような緑たち


烏龍茶・麦茶を飲みながら心と体をほぐす


2時間貸切風呂へ入り、河原露天に移動。18時まで部屋には戻らず

18時から夕食。今日は塩焼きだ


宿泊者は5組。ほぼ常連さんらしい


一番端の席。この席の窓だけ近代的だった



ご主人「本日はスタンダードメニューです」


良いのだ。駒の湯山荘は変わらなくてよいのだ

マタタビ酒






人生で最も美味しかった岩魚


頭が適度に焦げ身はまだホワホワしている。頭からかじろうと顔に近づけると、皮の香ばしい匂いに包まれる。川魚の匂いってこんなに良いものなのかと興奮しつつ頭を齧るとパリパリとお菓子のような感覚で楽しい。頭を残す人は多いけど、川魚は頭が一番美味しい。一番味が濃い。岩魚の大きさも丁度よい。20cmに満たない小ぶりなサイズだからこそ、固く感じず食べられる。この岩魚で骨酒を作ったら最高だろうな

天ぷらは揚げたてを適時





岩魚のなれずし


年に数回出される貴重品。発酵食品、特にこの手のものは臭いイメージがあるが全く臭わない。敢えて言うならクリームチーズに近いだろうか。非常に食べやすい珍味だった

ご飯は最初から置かれていた。それで良いと思う


そしていつも待ち遠しい豚汁


米と汁。良い


魚沼牛のゆっけ


とむこは酒の肴に少し醤油を加える

染みた煮物

ミツバアケビの木の芽の胡麻和え


今年はゴールデンウイーク前に山菜の旬が終わってしまったが、塩蔵したものをこうして食べられる


6月の日が落ちていない食堂で、夕餉は進む。朱色の器と伝統的な料理に囲まれている


僕は駒の湯山荘が連日満室にならないことが不思議でならない。最も上質なものが揃っている数少ない温泉旅館なのに


電気も電話も無い、というのが今では贅沢だ。下界は物の洪水で疲れてしまう


良い米を猫まんまにする贅沢


七味は味のためか色味のためか


 
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